やっとエグザンティアとすれちがえた話

もう1年以上も前のことなので、正確な日はおぼえていないのだが、板橋区にあるスーパー銭湯に行った帰り道、交差点で信号待ちをしていると、川越街道から一台のクルマが右折してきた。

夜も遅く道も暗かったので、どんなクルマかはすぐにはわからなかったものの、「ヘッドライトのデザインが、やけにカッコいいクルマじゃないか」と、なんとなく遠目から見ていたのだが、近づいてきて、「おおエグザンティア!」と気が付いた。

しかし、気が付いた時には、そのエグザンティアはもうすでに通り過ぎてしまっていた。同じシルバーで、バンパーは黒というのは確認できた。前期か中期か後期かはよくわからない。

私は、こんな近所でエグザンティアにすれちがえた偶然に、嬉しさを覚えながら、家路についたのであった。

 

それからは、あまりスーパー銭湯にも行かなくなったので、一度もすれ違うことはなかったのだが、つい最近、首都高の錦糸町あたりを走っていると、私の横の追い越し車線をすーっと走り抜ける、素敵なクルマが視界に入った。

「おおエグザンティア!」と気が付いた時には、あっという間に先に行ってしまったのだが、シルバーで、バンパーは黒、そして板橋ナンバーである。

「これはあのときのエグザンティアに違いない」私はそう勝手に判断した。

ただ、惜しむべくは、私はその時ムルティプラに乗っていたのである。

せっかくすれ違うことができたのに、こちらがムルティプラでは、相手からしてみれば何も注目するはずはない。

今回も残念なすれ違いであったのだが、とにかく、また偶然すれちがえたことは良かったと家路についたのである。

 

しかし、これで終わりではなかった、

それからまた一週間後、子どもが板橋のかっぱ寿司に行きたいというので、川越街道を走らせていると、遠く反対車線に、見覚えのあるデザインのクルマが目に留まった。

18時とはいえ、まだ外は十分に明るい。

色はシルバー、バンパーは黒。そして板橋ナンバーのエグザンティアである。

そして、今日は私もエグザンティアに乗っている。

「ああ、やっと会えたよ。今日こそ、しっかりとすれちがえる」

 

べつにナンバーの数字までしっかりと見ているわけでもないので、本当に3台すべてが同じエグザンティアだったのかはわからない。

そして、別にすれちがってどうするわけでもなく、本当にただすれちがうだけである。

でも、そんな当たり前のことすら特別に感じさせてくれるのだから、エグザンティアは素晴らしい。

私は感慨深げに、通り過ぎるエグザンティアの姿を目で追っていた。

すれちがうときに、相手の方も、右手を軽くあげて挨拶してくれたように見えた。