2013-01-01から1ヶ月間の記事一覧

ぐずの誕生(その3)

(前回のおはなしはこちらから) こぶしひとつやっと入るくらいのすき間をうらめしそうに眺めるギョクレン。先の暗やみにむかってライトをむけてみるものの、ひと筋の光がむなしくとおるばかりであった。けっきょくクモの巣まみれの頭をうなだれながらはしご…

ぐずの誕生(その2)

(前回のおはなしはこちら) しらせを聞いたギョクレンは次の日仕事を終えるや実家へもどった。 さいきんでは、子ねこもずいぶん成長して自分で歩けるようになったのだという。母ねこがどこかへ連れていっても、自分の意思でよちよち勝手な方向へ歩いてしま…

ぐずの誕生

ギョクレン氏はねこを一匹飼っている。数年前に実家でねこが子どもを生んだので、一匹貰い受けたのである。 母ねこのムクは、はじめてのお産であった。いよいよ産まれる段になって、夜中にギョクレン氏の母親の布団の上にあがってきた。にゃーにゃー鳴いて、…

書棚のなか

神保町の道ばたでラックに並んだ本を見ていたとき、宮沢賢治の文庫本を偶然手に取った。たしか「銀河鉄道の夜」がはいった岩波の短編集だったと思う。 なにげなくパラパラめくっていくと、最後のページにペンで署名がありその横には 「45年1月 成人の記念…