2012-01-01から1年間の記事一覧

空席(その3)

(前回のお話はこちらから) うかつなことをしたもんだと、自分の行動の軽率さを悔やんだのだが、ときすでに遅し。どうしたものかと考えたところで、どうしようもない。 男はさっきまでの鋭い視線をさやに納めてしまい、下を向いて縮こまってしまう。 すると…

空席(その2)

(前回のおはなしはこちらから) 「もうちょい先だよ。あと三駅」 路線図を確認していた若者は、ようやくルートを把握したので、振り返って仲間に声をかける。 すると彼の視界には、さっきまで自分がいた場所、ふたりの友人の間に見知らぬ男が腕組みをしてい…

空席(その1)

駅に到着した列車に、三人組の男が乗り込んできた。ギョクレンが座る向かいにちょうど空いている席があったので、ならんで腰かける。列車が動きだすと、車内にはたわいもない会話をはじめた若者たちの声がひびきわたっていた。 「次は○○駅~ ○○駅~」 列車は…

ごみ箱(その2)

(ごみ箱その1はこちらから) ギョクレンはすっかりあらわになったごみ箱の底をうらめしそうにながめている。せっかくきれいにしてもらえたのに、このうえなにが不満だというのであろうか・・・ ギョクレンは、ごみ箱にかぶせるレジ袋のストックをいつも用…

ごみ箱(その1)

ギョクレンの会社にひとりの親切な上司がいる。彼は毎週一回、まわりの人の分までごみ箱をそうじしてくれるのである。 その日がくると、大きなポリ袋を片手にねりあるき、そこへごみ箱の中身をかたっぱしから放り込んでいく。 「ごみあるかい」「ハイ、ごみ…

ごあいさつ

犬に名刺をもたせてしゃべらせる。 なんだ犬かとばかにする。 ところが犬が見えないところへ引っ込んで もっともなことをしゃべりだす。 知らずに聞いた人たちは まじめにウンウンうなずいている。 それではよろしくおねがいします。