ムルティプラの不具合について、相談してきた話

S店に行くには首都高を使うのが最短である。

パラリンピックの開催期間中は、首都高は1000円上乗せ料金となるので、できれば使いたくないのだが、そんなことも言ってられない。きっと首都高なんかガラガラだろうと思っていたのだが、意外にもけっこうな混雑であった。

走ること40分ほどで、お店に到着した。整備をしてもらうわけではないので、停めたその場で、ボンネットを開けてベルトの異音を見てもらう。

あたりはすっかりと暗くなり、お店の方はライトを片手に異音の位置を探ってくれた。

オフィス内の待合室からは、整備中のリフトを見ることができる。ピカピカのアルファロメオやFiat500が入庫しているのだが、整備担当の方は二人とも、急にやってきたぼろぼろムルティプラに時間を使っている。なんだか申し訳ない気持ちになってきた。

15分ほど待っていると、電話で応対してくれたスタッフの方がオフィスに戻ってきた。

「購入したお店で作業した整備明細ってありますか?」

外注先の明細書をもらっていたので、そのまま渡すと、顔をしかめながら覗き込んでいる。

「これは、納車整備というより、たんに車検を通しただけですね。」

やっぱり予想通りの反応である。素人の自分でも、なんとなく物足りない整備明細なのは感づいているのだから、プロから見たら、そりゃひどいものなんだろう。

「オイル点検と書いてありますが、点検してどうだったのか、交換したんだかも書いてありません。きっと交換してないんでしょう。エンジンオイルをこちらで調べると、かなり量が減っていて、1リットルほど継ぎ足しました。ミッションオイルの周りも埃だらけで、点検すらしてないでしょう。」

そうなのである。オイルは自分でも怪しいと思っていたので、購入店に電話で聞いたことがあったのだが、「外注先が最後に変えると言ってました」という返事をもらっていたのである。やっぱり交換していなかったか。。。

「異音の原因は、タイミングベルトが怪しいです。これも明細には交換と書いてありますが、カバーのネジを無理やり締めたのか、現状では外すことができませんでした」

なんと、そんな適当にネジを締められているとは。。ずさんな整備である。

「あと、ドライブシャフトのブーツから、オイルが滲んでますね。これだって整備してたら気が付くところですが、何も書いてありません」

ムルティプラは、ドライブシャフトブーツの漏れは急所だということは、素人の自分でも知っているのに、それを無視するとは、、、なんてひどい整備士なんだろう。

スタッフの方の見解としては、購入したお店にクレームを入れて、整備をやり直してもらうのが筋ではないかということである。

しかし、保証もない中古車で、それに応じてくれる可能性はほぼないだろう。

そもそも、半年かけて整備してこの出来上がりなのだから、今さら突き返したところで、納得のいく整備をしてもらえるとは思えない。

ということで、「できればこちらで、整備をお願いできないでしょうか」と、おそるおそる尋ねると

「我々も、ムルティプラを触るのは初めてですので、電話で相談を受けたあと、代表と話したのですが、困っているなら助けてあげればいいんじゃないと、言われてますので、引き受けることはできます。ただ、お電話でもお話したとおり、現在40台ほどが入庫待ちで、1か月以上お待たせすることになりますが」

なんとありがたいお言葉。40台でも50台でも待たせてもらいます。

というわけで、このお店にお世話になることにしたのである。