「部品屋さんにも聞いてみたんですが、高くてね・・・」
と、ボンネットを手で押さえながら話すおじさんの姿を思い出し、いくらするのかをネットで調べてみた。
たしかに高い。楽天で出品されていたものは1万円以上する。つっかえ棒で事足りるものなのに。
しかし、交換することで整備の効率が上がるのであれば、投資してもいい価格ではある。ただ、これを買うのであれば、わざわざ自分で買わなくても、お店の人に「楽天で買えますよ」と言って、調達してもらえばいいではないか。
そう思うと、自分で取り寄せるなりの理由が欲しくなった。
「値段が高い」のだから、もっと安いものを取り寄せよう。
そこで、ebayで探してみると、送料込みでも半額の5000円程度で手に入る。これならわざわざ自分で調達した甲斐もあるというものだ。
しかし、ebayは初めて利用するので、やや不安である。新品のダンパーを出品しているお店はいくつかあったが、評価が高い、ドイツのお店から購入した。
1週間ほどで、薄汚れた封筒がポストに投函されていた。
中にはダンパーが2本、裸のまま入っている。本当に新品なのか不安でいっぱいである。
これはドイツから日本への送料を抑えるため、あえてパッケージを取り除いたに違いない。
そう自分に言い聞かせ、すぐにお店に郵送し電話をする。
「先日話に出た、ボンネットのダンパーですが、5000円で海外から取り寄せましたので」
「それは安いですね、でも送料はかかるでしょう」
「いえ、送料込みです」
「それはそれは・・・では届きましたら装着してみます」
これで整備もしやすくなり、仙人も喜んでくれることであろう。
品質への不安は完全に拭い去ることはできないものの、期待しながら連絡を待っていると、5日ほどたってお店から電話が来た。
「あのダンパーですが・・・」
声を聞いただけで嫌な予感がした。
「中古品だったんですかね?」
「いえ、新品と説明には書いてあったのですが」
「そうですか・・・結論から言いますと、今現在車体に付いているものよりも、さらにダメでした」
なんと、半分覚悟はしていたが、本当に不良品だとわかると、やはりショックである。
結局、お店のほうでも実際に整備を始めてみると、毎回つっかえ棒では不便だったらしく、部品屋さんに発注し、このダンパー問題は終わりを見たのである。
安さを求めて無駄金を費やしただけの結果となったわけである。返品するにも送料がかかるので、お金は返ってこなくてもいい。しかし、このドイツの出品者には一言文句を言ってやろうと、メッセージを送る。
「このダンパーは本当に新品ですか?うちのムルティプラに取り付けたけれど、支えられないよ。パッケージもないし、中古品じゃないの?」
「うちの商品はすべて新品です。パッケージがないのは極力送料を抑えるためで、品質には問題ありません。あなたの車両の型式は?」
「うちのムルティプラは、2004年の1.6リッターガソリンモデルで、186型です。商品のページには対応すると書いてありましたが、ガス圧が貧弱でボンネットを支えられません」
というやりとりを重ねた結果、最終的には、商品の返品は必要なしで、全額返金されたのである。
返金されたことは嬉しいが、きちんとボンネットを支えられる商品が届いたほうが、もっと嬉しかったであろう。