夏の終わりとエグザンティアの話(2)

この夏はフル稼働のエグザンティアであったが、少し前から微妙に乗り心地に違和感が出てきたような気がしていた。

普段乗っている分には微妙な違いなのであるが、首都高の段差を越えるときなどは、明らかに挙動が違っている。

これはおかしいとLHMの量を確認してみれば、やはり加減ぎりぎりまで減っていた。

駐車場のオイルのシミが、心なしか広がっているように見えたのも錯覚ではなく、どこからかじわりと漏れているに違いない。

しかし、下を覗き込んでもポタポタ垂れているところは見当たらない。

普通なら大慌てで修理を手配する状況だろうが、幸いにして車検入庫が2週間後に迫っているのだから、ここはひとまずLHMを足して乗り切って、車検のついでに見てもらえば良いだろう。

 

そう高をくくっていたのであるが、ダメージは予想以上に深刻であった。

 

それから一週間経って、この夏に入院していた母親の退院当日。病院から実家に送り届けて、さあ帰ろうとしたときに、ハイドロのStopランプが一瞬光って、「ピロッ」と警告音が車内に響いた。

たった一回鳴っただけなので、気のせいだと思い込みたかったのであるが、この音に気のせいなど存在しない。

すぐにボンネットを開けてオイル量をチェックしてみると、なんと一週間でストンと底まで落ち切っているではないか。。。

ここから自宅までは約50kmある。

さて、どうしたものか。

 

今回も下を覗き込んでも目立って漏れだしている個所はない。

トランクに積んである予備のLHMをチェックしてみると、まだ7割ほど残っている。

行きは問題なかったのだから、継ぎ足しておけば自宅まで帰るくらいはできるだろう。

そう決めてオイルを補充し、すぐに帰路につく。

 

20kmほどは問題なく走れていたのだが、首都高に入ったころに、また緩い坂道で「ピロッ」と鳴り始めるように。。。

しまった。首都高に乗る前に一度オイルレベルをチェックすべきであった。

しかし、後悔してもあとの祭りで、エグザンティアはすでに首都高を進んでいる。

そして、最初は緩い坂道だけだったのに、コーナーでも「ピロッ」と鳴りだした。

これはいけない。

広い路側帯を見つけてボンネットを開けて、LHMを補充する。

 

もう大丈夫だろうと、再び進みだすが、今度は5分もしないうちにまた「ピロッ」が鳴りだした。

ああ、きっとダダ洩れに違いない。

「すまない。あと10分だけ走ってくれ」

と心の中でエグザンティアに謝りながら、なんとか首都高を降りて、自宅まで帰ることができたのであった。

 

それからさらに一週間経った車検入庫の当日は、もう走らせることはできないので、レッカーを呼んで甘木さんのお店まで運んでもらうことにした。

駐車場の前では道が狭くて作業ができないので、広い道まで50メートルほど動かさなければならない。

甘木さんに電話で相談すると、もう漏れるだけだからLHMは補充せず、エンジンかけて車高が上がるかを確認するようにとのアドバイスをもらう。

車高は上がってブレーキは効いたのだが、パワステはすっかり効かなくなっていた。

それでもゆっくりと50メートル走る分には問題ないだろうということで、ハザードを付けながら、なんとか移動させる。


そして、この夏、最後の最後まで役目を果たし、とうとう力尽きたエグザンティアに、大きな感謝の気持ちを込め、レッカーされていく姿を見送ったのであった。