はじめてレッカーされた日の話

長野の佐久で友人がパン屋をやっているので、年に数回はおいしいパンを頂きに、顔を出すことにしている。

車検戻りのエグザンティアで、長野までの道のりを気持ちよく走るのも楽しみに、練馬で関越に乗ったところまでは良かったのだが、三芳PAの手前で突然、Stopランプが付いて警告音が車内に響きだした。

エンジン始動後にはおなじみのあの音を、走行中に聞くのは初めての経験である。

ハイドロが漏れると、確か最初はステアリングが重くなって、最後にブレーキが利かなくなるんだよな、と意外と冷静に情報を頭の中で整理する。

幸いにして、三芳PAはあと500メートルというところだったので、左車線に滑り込んで、パーキングの駐車場でエンジンを停止させた。

ハイポンプかな、と思いながら外に出て状況を見てみると、左のタイヤ脇からポタポタとオイルが漏れだしていて、あっという間に水たまりができていた。

どこから漏れているかわからないけど、ああ、こりゃダメだと、自動車保険のレッカーに電話して救助を頼むことにする。

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幸いなことに、甘木さんのお店はすぐ近くである。すぐに電話して、なんとか受け入れてもらえるようにお願いする。

「レッカーされちゃうんだって」と細君と子供は、なんだか興奮している。

シトロエンに乗って、オイルが漏れて、レッカーされる話は、ネットでさんざん見ていたが、とうとう自分の番が来たのである。

30分ほど待っていると、レッカー車がやってきて、エグザンティアは手際よく運ばれていった。

走れなくなって、積載車に積まれている姿はかわいそうで、見送っているうちに悲しい気分になってしまった。

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このまま車もないのに、パーキングにいても仕方がないので、我々も徒歩でパーキングの外に出て、タクシーを捕まえて甘木さんのお店に向かう。

高速でレッカーされると、次の出口で降りてから引き返してくるということなので、我々のほうが先にお店についてしまった。

工場の中は今日もシトロエンたちで大盛況で、そこにまた一台、修理を増やすことになってしまい、とてもしのびない。

エグザンティアがレッカーされてくるなんて珍しいね」

などと話していると、レッカー車が到着した。

「車高落ちてないな。どこだろうな?」

などと話しながら、工場の奥へと運ばれていく。

我々もそれを見届けて、お店をあとにした。

せっかく車検から戻ってきたのに、これでまたしばらく、エグザンティアとはお別れである。