漏れていたのはLHMだった話

オイル漏れの症状を見てもらうべく、甘木さんの工場を訪れると、整備を待つシトロエンたちが、わんさか集まっていた。

甘木さんはこちらの姿を認めると、すたすたと歩いてきて、エグザンティアのエンジンをかけてボンネットを開ける。

「音聞こえないねえ」

「あ、キュルキュルですか?5分くらい走ると消えてしまうんです」

ベルト鳴きについては、次の機会にじっくり見てもらうことにして、今回は懸念のオイル漏れだけを確認してもらうことにした。

事務所でコーヒーをすすりながら作業を待っていると、向こう側でPCを見つめ、仕事しているように見えたカレーのお兄さんが、

オペルがまた日本に入ってくるみたいですよ」

 などと、たわいもない会話を投げかけてくる。

このゆるい感じが懐かしい。入庫が増えた土曜日だと、ゆっくり話している余裕もないので、平日の訪問でひさびさに味わうことができた。

さて、診断の結果は、エンジンオイルではなくLHMだった。

ハイポンプのLHMオイルなら、年末から少し漏れていたのは知っている。それが徐々に下に落ちてきて、とうとう地面まで到達してしまったということらしい。

現状は様子見で、症状がひどくなったら対策を考えようということで落ち着いた。それほど深刻な問題ではなかったことに一安心である。せっかく来たので半年ぶりのエンジンオイル交換もしてもらった。

「このエグザンティアはね、走行距離も少ないし、うちに入庫してくる中でも、状態はホントに良い車体だから」

と甘木さん。

エグザンティアを所有してから1年半、それなりにトラブルには見舞われているので、ホントかなと思ってしまう。

だが、そう言われてしまうと、できるだけ長く乗っていきたい気分になる。

ステアリングから伝わる振動に、生き物の鼓動のような愛着を感じながら、帰路についたのであった。

 

f:id:gyokuren:20210415004907j:plain