東京動物記

道を歩いていたら路地裏でカラスが地面をつついている。何をしているのかと目をこらしてみると、そばにヒキガエルが這っていた。

このあたりにヒキガエルがいることは知っていた。雨の日のあとに一度だけ目にしたことがあったのだが、そのときのカエルなのかはわからない。握りこぶしよりひとまわりは大きいくらいで、背中にイボが見える。

カラスは地面ではなく、ヒキガエルをつついていた。カエルは逃れようとしているらしいが、動きがのろすぎてまるで逃げられる気配はない。

しばらくなりゆきを見まもっていると、視線に気がついたカラスがこちらを振り返ってとびたった。しかしどこかへ行くわけではなく、すぐ上の電柱にとまって、カエルとこちらの様子をうかがっている。カエルはあいかわらずゆっくりゆっくり歩いていた。

 

スーパーに寄って買い物袋をぶらさげてもどってみると、カラスのやつはまた地面に降り立って下を向いていた。ふたたび立ち止まって見ていると、今度もまた視線に気がついてとびたった。あとには、あおむけに腹を見せてぴくりともしないカエルの姿があった。

 

家にもどって袋から品物を出していると、ボックスティッシュが見当たらない。たしかに買ったはずである。きっと袋詰めするさいに台に置き忘れたのだろうと思い電話をしようとした。レシートをごみ箱から拾いだして確認してみると、ティッシュなどどこにも書いていなかった。