うまいめしを食べるを考える

めしを食うというのは、集中すればするほどにうまいものである。

これは読書や映画なんかと一緒で、ほかのことに気をとられていたのでは、おちおち味も楽しめない。

ところが、現代人には時間が足りないので、いそがしいときなどは、めしがただただ腹をいっぱいにするだけの行為になってしまっている。その行為になれてしまうと、こんどはただめしを食うだけの時間というのがもったいなく感じてしまう。

そうしてなんの用事もないときでも、たいしておもしろくもないケータイの画面をのぞきこみながら、ついつい「ながら飯」をやってしまうのである。

「ながら飯」をやっていてはとうぜんにストレスがたまる。ろくなものを食っていないと思い込んで、うまいものを食べたくなる。だからあちこちにうまいものを出す店があって、そこでうまいものを食べさせてもらってよろこんでいるのである。

うまいものを食っていればうまいと感じるのは当たり前のことで、それは、なんてことはない、ただ、うまいものを食っているだけなのである。

めしを楽しむとは、もっと集中して腹の中にめしを入れる行為を楽しむことなのである。

グルメになって鋭くなるのが情報力だけで、逆に感覚が鈍くなってしまうのでは悲しいものである。