Xantiaに決めた話

甘木さんの工場を訪れると、真先に目に付いたのは赤いBX GTiであった。四角いボディにやれ気味の赤い塗装が、ノスタルジックな魅力を引き起こさせる。

甘木さんは、勝手に座っていいよと言って仕事に戻っていったので、まずは運転席にどっこらと腰かけた。

レトロでありながらもモダンでもあるインターフェイスと、シンプルでスカスカな室内空間は、運転するのがワクワクしそうな予感がする。後部座席は、座った瞬間にリアガラスに頭がすりついて、180㎝の男が座るには窮屈である。

これはつくづく、もっと若い独身時代に出会っていたいクルマだと思った。いいクルマであるが、細君と幼い息子を乗せて走る姿は想像できない。かといってファミリーカーとこれと2台も所有するほど道楽者でもない。

続いてエグザンティアにお目にかかる。本物を目にするまでは、近所に停まっているカリーナくらいのものだろうと想像していたのだが、ディテールが違いすぎた。シルバーがボディラインを流れていくような、隙のないプロポーションである。

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エグザンティアはね、おすすめだよ。僕も乗ってるからね。最終型は信頼性も抜群だからね」

いつの間にか甘木さんが隣に立っている。

たしかに家族をシトロエンに乗せるには、少しでも信頼性は欲しいところである。それでいてカッコいいのであればなお良い。前期型がベルトーネのオリジナルデザインで人気があるらしいが、後期型のほうがよりフランスらしいデザインで私は好きである。

これ以上迷う余地はなかった。私の次のクルマはこのエグザンティアに決まったのである。