わたしには、ここ数年ずっと頭に引っかかっていた問題がありました。
それは、奈良にある室生寺という山あいのお寺をたずねたときのこと。
境内で奇妙な看板を目にしたのです。
SANPAIZYUNROという言葉に、私の目はくぎ付けとなりました。
神秘的な山中に、おごそかにたたずむ寺院のどまん中で、こんな冗談みたいな看板が立っているのです
どういうつもりで立てたのだろうか・・・
この粗末な看板は、室生寺の美しい五重の塔よりもはるかに印象深く、わたしの胸に突きささりました。
本気であれを英語だと思っているのだろうか・・・
This Wayではだめだったのだろうか・・・
どうしてヘボン式でなく、訓令式のローマ字なのだろうか・・・
そしてSANPAIZYUNROは、いったいだれをどこへ導いているのだろうか・・・
考えれば考えるほど、新たな疑問が浮かんできます。
そういえば、室生寺は女人高野といわれる密教寺院です。
しまいには、これは見たものの心に曼荼羅を描かせる室生寺サイドの狙いなのか、と勘ぐりたくなりました。
旅程を終えて奈良を後にしても、その存在をぬぐい去ることはできません。
ことあるごとにこの写真をながめては、不思議な気分にひたっていたものです。
しかし、それから10年ほどたったつい先日、わたしはとうとう答えを見つけることになったのです。