激安レンタル(その3)

(前回のお話はこちら)

 

お金をはらって、サイズを告げても、はいどうぞというわけにはいかなかった。店員はギョクレンたちのことなどほったらかしである。

「ハイ、じゃあこちら。サイズどうですか。きつかったら言ってくださいね」

ちょうど先客の家族づれが、ウェアから板まで全員分レンタルしていたので、ホクホク顔で接客をしていた。

いっぽうギョクレンたちの前には、はじめに棚からむぞうさに引っぱってきた靴が置かれただけである。

サイズが合わなかったので、横で聞いたとおりに、きついですと伝えてみた。しかし、替えの靴はなかなかやってこない。ギョクレンたちに向けて発したわけではないので、とうぜんであろう。安く貸してやるだけありがたく思えと言わんばかりの表情で、通り過ぎてしまうのである。

フロントには、ヒマそうな若いスタッフがいたのだが、これまたあらかじめ示し合わせていたのだろう。口笛でも吹きそうな顔をして、見て見ぬふりを決め込んでいた。

そしらぬ顔の店員に横を素通りされるたび、どこからか外の冷気が吹き込んできたのかと思うほどのきびしさが伝わってきた。

これも激安レンタルの代償なんだ・・・。

ギョクレンは、スタッフたちの仕打ちに耐えながら、そう自分に言い聞かせていた。

しだいに手持ぶさたになったので、ギョクレンはショップ内をうろうろしはじめた。ちょうど若造スタッフのいるカウンターの前まで来たのだが、相手はとうぜんギョクレンなんぞ眼中になく、パソコンの画面を見ている。
と、その手元にクリアファイルにはさまれた書類を見つける。どうやらレンタルの料金表である。
じっさいの価格が気になったギョクレンは手元をのぞき込んだ。

 

スノボ・靴セット=1日レンタル2000円 2日レンタル3500円・・・・

「一日1500円ずつでしたら・・・それでも十分割引きしてますが・・・」

 

店員のセリフを思い浮かべて驚がくした。たったの500円である。500円でこんなにいばり散らされていたとは・・・・。

「えーっ、たったの500円しか違わないの!?」

大きな声をあげ、目を丸くして若造を見た。

はずみで目の合った若造は、ぬすみ食いがばれた犬のような表情で、そそくさ顔をそむけていった。 

(終)