戻ってきたムルティプラの話

お店の整備の人は、交換した部品やら、作業中に撮った写真やらを見せてくれながら、今回の整備について説明をしてくれた。

完全にくたびれ切った部品たち、乳化したオイル、鉄粉カスだらけの内部写真など、素人の私が見ても、とてもひどい状態だったことは明らかである。

思えばこのムルティプラも可哀想な奴である。

前のオーナーがどんな人で、何年乗っていたのかは知らないが、おおよそ愛情をかけて乗っていた形跡などはみじんもない。

そのうえで、購入店でいい加減に整備をされ、満身創痍のまま私のところにやってきたのである。

 

一通り説明を終えたあと、お店の人がエンジンをかけてくれる。

私は自分の耳を疑った。エンジンのかかった瞬間から明らかに違う!

そしてアイドリングの音も、これまで聞いたことのないくらい、重厚な音である。

これが本来のエンジン音だったのか。

「ずっとタイベルがカタカタ、クラッチがシャーシャーとダブルで鳴いていましたからね」

私の反応を見て、お店の人が説明してくれた。

クラッチもストンとつながり、1速で発生したジャダーもほぼ無くなっている。まるで別のクルマである。

クルマには心は存在しないだろうが、やっぱり愛情をかければ、それだけ応えてくれる。ようやく普通の状態に戻れて、このムルティプラもきっと喜んでいるに違いない。

そして、時間はかかったが、本当に良いお店に出会えたと思う。

まだまだ問題は残っているので、私の財布もムルティプラの寿命も、いつまで持ちこたえられるかわからないが、お互いもう少し頑張ってみよう。

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余談ではあるが、昨年整備を待っている間、今回の顛末を購入店に言おうか言うまいか、迷っていた。

相手は70歳を過ぎたおじいさんで、この先長くお店をやるつもりもないだろう。

このお店を選んだ私にも責任はあるので、このままそっとしておいてあげようかとも思ったのだが、やっぱりプロとしてクルマを売った以上は、問題があったことはきちんと伝えなければと、意を決し電話をかけたのである。

シトロエンの仙人に整備してもらって今回の結果だったら、あきらめもついたのだが、輸入車整備もしたことのないような工場に外注に出されて、手抜き整備をされたのが悔しくてならない。

最初の連絡では仙人が整備をしていたのに、どうして途中から外注に出したのか、と尋ねると

「うちのメカは、ご存じのとおりシトロエンが専門で、イタリア車はバイクが専門なんですね。それで、相談した結果、これはパルさん(外注先の工場名)に任せたほうが良いということになりまして、、、」

 

バイクだと。それを先に言いなさい。。。。