エニカに乗ってみた話

さて、いよいよ旅行当日の朝を迎えた。

指定された住所に自転車で行ってみると、たくさん自転車の置いてある一軒家があって、しばらく待っていると中からオーナーが出てきた。家の周りはとても狭いので、大通りまでクルマを出してもらう。

ここで、利用ガイドによると、お互いの免許を確認したり、クルマの傷を説明したりすると書いてあったのだが、オーナーはあっさりと帰ってしまった。

いささか拍子抜けしたものの、きっと気にしない人なんだろうと考えて別にこちらからも引き留めることなくその後姿を見送った。

2004年式というのは、エグザンティアに比べると4年も新しいのであるが、15年は経過した古い車である。とはいえ車内は清掃が行き届いていてクルマの調子もまったく問題ない。

しかし、乗り心地はエグザンティアとは天と地の差である。通常の舗装路でも路面の状況の左右されて車体は揺れるし、ハンドルを切ったときの横揺れも激しい。ミニバンとはこんなものなのであろうか。それともシトロエンに慣れてしまっただけなのか。さらに、2.4リッターのエンジンで7人乗ると、まったく走らない。高速も加速しなければ峠道などは登らない、曲がらないで、運転していてストレスがたまる乗り物であった。

そんな運転をしていたら、子どもの一人が車に酔ってしまい、借りたチャイルドシートに吐いてしまった。すぐにふき取り、返す前にファブリーズを吹きかけて、一応はきれになったものの、黙っているわけにはいかない。返す時に正直にオーナーに伝えて謝ったのだが、これまたオーナーは「いいですよ」と気にかける様子もなく、チャイルドシートなんか見向きもしなかった。このオーナー、完全にクルマには無頓着で、返した後も傷があるかどうかなども確認しない。

やはりこれくらい、クルマに対して希薄な感情を持たなければ、エニカで貸すことなどできないのであろう。年季のいった車で週末に1万円稼げるのだから、たいしたものである。

私などはこのエグザンティアを心底気に入って乗っているので、到底まねできない芸当だと、感心しつつも、こんな車の維持の仕方は、なんだかつまらないようにも思えてきて、家路についたのである。