レジでのあやまち

行きつけの商店で買物をしていたギョクレンは、最後に通りかかった菓子パンコーナーで足を止めた。棚の上には「切り出しカステラ」という商品が二つ並んでいる。ギョクレンの視線は、パッケージの隅に貼られた「3割引」のシールを逃さずとらえていた。

この「切り出しカステラ」はギョクレンの大好物である。特売品のため常に棚に並んでいるものではないのだが、これまで幾度となく購入し、そのコストパフォーマンスの良さに満足してきた。姉妹品で「ふぞろいどら焼き」もあり、これまた大満足の商品である。

その大好物を見つけただけでうれしいのに、なんと3割引である。

198円の3割引か・・・。もはや値段すら暗記しているギョクレンは、空を見つめてつぶやきながら、内心ほくそ笑んだ。迷わず一つをかごに入れ、レジへと向かう。

「いらっしゃいませ」

レジに立っていたのは、初めて見る男である。男の手つきは非常にたどたどしく、明らかに新入りであることがわかるものであった。しかし、別に急いでいるわけでもなかったので、その手つきを温かく見守っていた。

「1331円になります」

すべての商品をレジに通し、金額をコールする新入り。そのとき、あれだけ温かったギョクレンの瞳が、とたんに険しいものに変わる。ギョクレンは見逃さなかった。

コイツ、「切り出しカステラ」を3割引にしていないではないか・・・

 

(つづく)